「日本の伝統的な歌唱表現〜長唄〜」の実技研修を終えて





 平成24年度からの新学習指導要領本格実施に備えて、東京都中学校音楽教育研究会 歌唱研究部では「曲種に応じた歌唱表現」の授業研究を進めています。今回は「日本の伝統的な歌唱表現〜長唄〜」の実技研修ということで、世田谷区立富士中学校に杵家弥佑先生をお招きし『問答入り 長唄「勧進帳」』より「元より勧進帳のあらばこそ・・・」の部分を中心にご指導いただきました
 伝統音楽は口伝が基本であって、文化譜はあくまで”備忘録”として考えてほしい、といった講義から入り、姿勢や扇子の扱いといった基本から教えていただきました。冒頭部分の富樫の詞章を受けて、家来達になりきって「心得申して候」と言うお稽古は楽しく、また特に、

  「旅の衣は篠懸の 旅の衣は篠懸の 露けき袖や しをるらん」

の部分での”序破急”の説明及び実技指導は、大変わかりやすく好評でした。
 この研修は11月10日(水)に世田谷区立桜丘中学校で行われる研究授業(授業者は木下圭先生)を想定してのものです。生徒に指導する前に、中学校の音楽科の教師が長唄の歌唱表現をある程度身につけよう、という企画でした。しかし長唄の歌唱表現とは、一朝一夕にはゆかぬ奥の深いものであることを再認識させられました。また実際に授業でどの部分を教材としてとりあげるかは大きな課題でした。弥佑先生に11月10日の研究授業のゲストティーチャーを依頼したところ先生には、教材選択のことも含め、お弟子さんを招集して中学生むけのテキスト作成の委員会を立ち上げるなど、積極的に関わっていただいています。
 長唄の歌唱表現を中学校の音楽の授業に取り上げる取り組みは、先進的な研究です。限られた授業時数と公立中学校の薄謝の条件のもと、いかに子供たちの心により訴える授業を展開できるか、ほんの少しの部分でもその役柄の思いをつかみ、声にして表現できるかが課題です。この取り組みが発信源となって東京に、そして全国に広まっていくように願っています。
 弥佑先生ありがとうございました

吉田治子(東京都中学校音楽教育研究会 歌唱研究部副部長 世田谷区立富士中学校 主幹講師)




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