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《花三升菊寿(はなとみますきくのことぶき)》

初演
文政元年(1818)9月中村座
『太平記忠臣講釈(たいへいきちゅうしんこうしゃく)』二番目大切

① 国立音楽大学附属図書館竹内道敬文庫所蔵(07-3427-01)
(1)半紙本1冊
(2)全二丁(表紙〇・五丁、本文一・五丁)
(3)八行
(4)太平記忠臣講釈(たいへいきちうしんこうしやく)第二ばんめ大切/中村座/花三升菊寿(はなとみますきくのことぶき)
(5)雪の部
(6)「花と三升 壱」「花と三升 弐」
(7)正銘/堺町/沢村屋利兵衛/板元
(9)瀬川菊之丞 市川團十郎
(10)長唄 芳村伊十郎 冨士田吉四郎 芳村孝三郎 冨士田千五郎 松永平蔵 三味線 杵屋正次郎 杵屋和助 杵屋三郎助 杵屋勝太郎 杵屋六三郎 ふへ 待田由兵衛 ふへ 住田彦七 小つゞみ 坂文左衛門 大つゞみ 太田市左衛門 たいこ 田中三平 たいこ 大西徳蔵 三味せん 杵屋喜三郎 三味せん 鳥羽屋三五郎 
〈備考〉
「時まだ/わかき/雪と月」(角書) 「狂言作者 瀬川如皐」「ふり付 藤間勘助」「ふり付 藤間勘十郎」「ふり付 市山七十郎」「上」(表紙) 「杵屋六三郎述」(内題下)

〈考察〉 
 7代目市川團十郎(1791~1859)と5代目瀬川菊之丞(1802~32)というまだ若い2人の雪月花の踊り。角書「時まだ/わかき/雪と月」と曲名の「花」で「雪月花」を表し、曲名の「三升」は團十郎、「菊」は菊之丞を表している。團十郎はこの時28歳、菊之丞は17歳。
 正本・辻番付・絵本番付に役名はないが、役者評判記『役者優面合』(文政2年正月)によると、長唄「雪の部」は「米つき男・花うり女」、長唄と富本の掛合「月の部」は「敦盛・玉より姫」、富本「花の部」は「隅田川渡守・隅田川の狂女」。同書では、市川團十郎の条に「切狂言路考丈御両人にて所作事○あつもり○米つき男○隅田川渡守三役とも大評判 わる口 蝶/\の所作は袖ばかりうごかして其上とまつたかたちは見へがわるかつた ヒイキ あの外に仕かたか有るか夫は無理といふ物だ わる口 去顔見世の二人狐の振に其侭 小田原丁 やかましい其野郎たゝきくぢけ 頭取 是はしたりお静り被成ませ」、瀬川菊之丞の条に「切狂言花と三升菊の寿に三升丈と御両人の所作事玉より姫花うり女隅田川の狂女花に狂ふ蝶の所作事大でき/\浄るりは富本豊前太夫 ヒイキ イヨ柳橋々々 頭取 受領致され豊前掾と改名久/\にて出語り別して評判よろしく路考丈富本丈元来御縁者の事一段と御同慶に御さつし申升る」とある。
 「雪の部」では、〽くるくるくる」で團十郎の米つきが登場。正本表紙では杵と箱を持ち、餅屋を思わせる。〽地臼」は地面に臼を転がすこと。〽つまあがり」は上り坂。そこに菊之丞の花売女が登場し、〽今宵」からは花売女の振りか。正本表紙の花売女は、着物の裾を帯に挟む田舎娘の姿。正本の花は桜に見えるが、絵本番付は菊と薄。〽郡山」で三下りから二上りとなり、ここは在郷唄であろう。ワキ唄の冨士田吉四郎とタテ唄の芳村伊十郎の分け口で掛合となる。〽黄金の色や」からは木遣り。〽月をみたさよナ」からは座頭の振りで、正本表紙絵から菊之丞が座頭に、團十郎が三味線を背負った瞽女に扮したようだ。〽たつきに」からは米つき男と花売り女に戻り、チラシとなったか。

 雪の部
三下り〽くる/\/\とおせ/\ 地臼にせまき小路のつまあがり 合 でつくりぽつくりそつくりかへつてこしうつおのこのかた手わざ 〽跡につゆもつはなのゑだ うつりがのせてみたからの 神のそなへのときわぎも 合 たばねがみなる花うりおみな 袖すり火打たばこの火 かした目もとのわざくれや 〽こよひこべとてたまはたの そりやたれがたしかぬしだんべ ヲヽおかしらしいじやないかいな ヱヽヽなんとした これはなおかしやんせ 花に小よねのしら雪や ちりつもりたる(一丁ウ)臼の跡 よそにみなしてあゆみくる 二上り 吉〽こほり山とはたが名を付たよ 合 山じやない物里じや物 しよんがいな せりふ〽これあねご 伊〽たかいもひくいも恋ならば 隔心は有まいに やだアといやらばちからづく 吉〽ヲヽこわや さわらはやれん花ころも つゞれのにしきつくろはぬ 伊〽あさねがみさへみだれしまゝに しつもうはきもどこへやら おなごの道もわすれぐさ 〽むかし恋しとうき立て さとの俄のうかれ哥 合 そつとなでたるしりもちやつくまい ひやうしをそろへてきやりまじりにやつてくりよ 〽こがねのいろやあわのあしつよ かよひくるわのうまみをのせかけ よいさ/\/\よんやナ 合 はでな道中ねれたらもてこい うつゝい物だかおにはの桜でみたばかり(二丁オ) よいさ/\/\よんやナ きやくはのりぢにナ うそはでまかせおいかけしめかけ こへをかけやアやれこりや其きで こんゑもしよゑんやこれはとな 中みてそこ□のつき合も 恋の手くだや 合 杵のかづ 〽しのぶなら/\ ひるは人めよよるは又 かよふてあふてうれしさは 合 こづまからげのしどけなや サアヤアトヤア 〽月を見たさよナはれやらぬ 此むら雲の目もとにぬかるつへの先 おやつかな さぐりよる手にこぼりのふかみ こすにこされぬ 合 しあんばし 〽こへじやよばれす 手じやまねかれず 哥のもんくでさとらんせ ちよいと/\/\横丁のせな殿 ついといつてついときな おゝさそだやれ 合 どふなとせ 〽たつきに花のにつくりや 手かるにかへて臼と杵 おもきをはこぶうらおもて 合 のきにまばゆきむつの花 花と三升の菊の寿(二丁ウ)

① 国立音楽大学附属図書館竹内道敬文庫所蔵(07-3427-02)
(1)半紙本1冊
(2)全三丁(表紙〇・五丁、本文二・五丁)
(3)八行
(4)太平記忠臣講釈(たいへいきちうしんこうしやく)第二ばんめ大切/中村座/花三升菊寿(はなとみますきくのことぶき)
(5)月の部
(6)「花と三升 三」「花と三升 四」「五了」
(7)正銘/さかい丁/沢村屋利兵衛/はんもと
(9)瀬川菊之丞 市川團十郎
(10)長唄 芳村伊十郎 冨士田吉四郎 芳村孝三郎 冨士田千五郎 松永平蔵 三味線 杵屋正次郎 杵屋和助 杵屋三郎助 杵屋勝太郎 杵屋六三郎 ふへ 待田由兵衛 ふへ 住田彦七 小つゞみ 坂文左衛門 大つゞみ 太田市左衛門 たいこ 田中三平 たいこ 大西徳蔵 三味せん 杵屋喜三郎 三味せん 鳥羽屋三五郎 富本豊前掾 富本綱太夫 富本吾妻太夫 富本駒太夫 富本浜太夫 三弦 名見崎長佐 上てうし 同 要佐 鳥羽屋里長
(12)文政元寅年九月吉日 沢村蔵板
〈備考〉
「狂言作者 瀬川如皐」「ふり付 藤間勘助」「ふり付 藤間勘十郎」「ふり付 市山七十郎」「下」(表紙) 「瀬川如皐述」(内題下)

〈考察〉
 「月の部」は、團十郎が敦盛を、菊之丞が玉織姫を踊る。正本表紙絵では、玉織姫が左手で敦盛の馬の手綱を握り、右手には鞭を持っている。
 後半〽ももとせ」からは蝶の振り。正本表紙にも、蝶の羽根を背中に付けた團十郎と菊之丞が描かれている。敦盛と玉織姫が死んで蝶になったという設定か。
 なお、富本「花の部」の詞章は、文政十一年に山王祭の附祭として4世杵屋三郎助(後、10世杵屋六左衛門)が作詞・作曲した長唄《賤機帯》の歌詞とかなり共通している。

 月の部
哥〽ものゝふの くちせぬ名にやたつか弓 はるもなにわのうらづたひ あしの角かみうす化粧 みなくれないのよそほひも うしほのなみにうつりぎを とめきのかほり袖びやうぶ 姿いさましかわゆらし 〽道しらば たづねもゆかんすみよしの 恋わすれ貝わすられぬ 合 二世のねがいにあとおふて きせながめさせかついろを いわふわか木の梅桜 やへははすはに心はひとへ ちらばうらみも岩本さくら 合 うや(三丁ウ)つらや 上るり〽くがにはしらはた源氏のともがら うみにひやうせん平家のあかはた げにも小松のゆめのあと 寿永のあきのくさかれて はやしのゝめとあけうばふ 中にひときはすぐれしひおどし おちゆくふねにおくれしと こまにむち打みぎわのかた あとにもしたふむしやいつき あふぎをあげてさしまねく かへさせ給へとよぶこどり うた〽おぼつかなくもこまとめて 合 なぎさにかへすかたおなみ うた〽はかなや 上〽ぜひなや(四丁オ) 上〽なさけなや うた〽つらやあらしにつほみの花の らくくはろうぜきあしたのつゆと きへぬうらみを今さらに なのみかんばしやみの梅 上〽女心のそれぞとも しらでまよひの一すじに 宵のむつごとさゝめごと てきにかちくりのしあわび 門出いはふわらひゑに あからむ顔を引よせて じつとくはへの口と口 よそのおなごと物いはぬ かためをしやんとしんきさは ねやのじやまするちごよろひ きぬぎぬしらぬ有あけに どんな貝がねよせたいこ とりよりにくいじやない(四丁ウ)かいな 〽イヽヤうたにも身をすてゝこそうかむせもある花もさく すまのくるわのそのなにめでゝ だいり女郎しゆのしなさだめ 上〽身じまひべやのうはさにも かねくろぐろとたかまゆや ほんにむくはんの大夫さん 松のくらいのおいらんに かむろはあをばがあいづのふへも たはやあんどうたそしらぬ ひよどりごへのうらばしご こわいやりてがさかおとし ないてわかれのほとゞぎす あかつきがさもゆめなれや 上〽もゝとせは 花にやどりてすごしてし そうじが(五丁オ)ゆめのうゝぜんたる くさのまくらにつゆのみの おきふしなれし水かゞみ うた〽たが水さして思ひばの たとへひよくをさかれても かはるまいぞやきみこてふ 上〽われはちくさのうへにおく 花のしづくのしつほりと うた 伊〽又しつほりとだきてふや しやんとあげはのもろつばさ 合 うた〽中むつましききくてふの つまよもすそよ袂にぬひの 上〽やどりもふゝきふくぼたん 哥〽そのうつしゑももろこし大和 さこくといつしやさ人の 上〽むかしを花と三ツ升や およそたへせぬきくのことぶき

国立音楽大学附属図書館蔵
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